平家落人の里で脈々と受け継がれてきた「椎葉神楽」。その起源は明らかではないが、神楽で歌われる「唄教」(唱え言)は室町中期以前ではないかと推測される。
その特色は、狩猟や焼畑など、山の生活を表した要素が神楽の中に見られること、
さらに全国的にも珍しい曲目が多い、近世以前の古い形態をよく伝えているなど、その価値は芸能史・歌謡史・信仰史上においても高い。
現在は村内26地区で伝承されているが、それぞれに違った特徴を持っている。

明治42年、柳田國男が、日本の民俗学の出発点といわれる「後狩詞記」を記してから「椎葉」の研究は始まったが、椎葉神楽が学問的に発掘されたのは、 昭和39年の本田安次氏の調査からだった。
「椎葉神楽発掘」は昭和55年12月、椎葉神楽が国の無形民俗文化財に選定されることが決まったことを受けて、翌月の昭和56年1月にスタート。
「椎葉村の方々に研究成果を少しでも還元したい」と始まった連載は12年、127回に渡った。平成3年には、国の重要無形民俗文化財に指定された。
この連載では、「唄教」(唱え言)と「神歌」、そして「宿借り曲」(山の神が一夜の宿を乞う問答体の曲)の解明を中心に紹介している。

地元では、神楽は「冬まつり」「年まつり」として村人総出で行っている。
「椎葉神楽発掘」は、そんな村の文化・伝承がいかに価値あるものかを村民に紹介した先駆けといえるのではないだろうか。
この連載の終盤より、現宮崎公立大学教授の永松敦さんが「椎葉歳時記」「九州の民俗芸能」を執筆。 さらに「椎葉の民話」「椎葉の民具」など、古き良き椎葉村の文化を伝える連載が現在まで続いている。 「椎葉神楽発掘」は連載記事に新たな資料を加えた同名の書籍(平成24年・岩田書院)も発刊されている。興味のある方はこちらも一読してみてはいかがだろうか。
ジャパンイーブックス

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